赤いメガネをかけていると、赤いものは見えない

出版に寄せて 〜 赤いサングラスとは何か

この条文は、日米安保条約は、当初の10年の有効期間(固定期間)が経過した後は、日米いずれか一方の意思により、1年間の予告で廃棄できる旨規定しており、逆に言えば、そのような意思表示がない限り条約が存続する、いわゆる「自動延長」方式である。本条に基づき、1970年に日米安保条約の効力は延長されて、今日に至っている。

外務省ホームページ 日米安全保障条約(主要規定の解説)第10条 より

外務省のウェブサイトにある〈日米安全保障条約(主要規定の解説)〉なるページからの引用である。第10条に付された「解説」だ。

この文章の面妖さはどうだろう。仮にも主権国家同士が安全保障について取り決めた条約である。時々刻々と変化していく国際情勢。中でも極東、東アジア地域では大国間の思惑が複雑に絡み合い、先行きは不透明だ。にもかかわらず、日米安全保障条約は〈意思表示がない限り条約が存続〉する〈「自動延長方式」〉を採用しているという。

その間に世界は数々の変動を経験してきた。最たる例は1991年、ソビエト社会主義共和国連邦の瓦解だろう。日本の「仮想敵」が消滅したのだ。それでも安保条約は微動だにしなかった。まさに「極東戦線異状なし」。「前例踏襲」が三度の飯より大好きな外務官僚の心情をそのまま映し出したかのような象徴的な事例である。

日本国内でテレビや新聞、インターネットを眺めていても、世界の本当の姿は理解できない。なぜか。私たちが「赤いサングラス」をかけているからだ。これでは重要な物事は視界から消えてしまう。自分の目で捉えるのは困難だ。
受験時代を思い出してほしい。誰もがお世話になった「チェックシート」と「チェックペン」。教科書や参考書の要点をチェックペンでマークし、チェックシートをかぶせると、消えてしまう。暗記ものには欠かせない必須アイテムだった。
とっくに受験期をすぎたのに、私たちの視野はチェックシートをかぶせた状態にあり、「要点」が見えない。「赤いサングラス」をかけているとはそういう状態だ。

現代日本の姿を見えにくくしている「赤いサングラス」とは何か。日本にとって「宗主国」に当たる米国を信奉させるための仕掛けに他ならない。米国への迎合主義であり、属国としての立場を受け入れる構造そのものだ。
戦後このかた私たちは「赤いサングラス」をかけて世の中を見てきた。その像はどこまで歪んでいたのか。
赤いサングラスを外し、どう生きていけばいいのか。

『赤いメガネをかけていると、赤いものは見えない』の目次

  • まえがき
  • 閉ざされた言語空間〜バイデン来日で露呈
  • デジタル衆愚政治
  • 良識の府
  • この国のカタチ
  • 自立なくして自尊なし
  • 英知は国益の為に
  • 国葬に寄せて
  • 転換点にて
  • 日米不平等条約
  • ガーンジー島からの紳士
  • 飢餓回避こそ一義
  • 哲学の不在
  • 西欧の知恵
  • どうするニッポン
  • 日英同盟
  • 生き延びろ、日本
  • 失敗の法則
  • 楽市楽座
  • 現場現物
  • ウクライナ侵攻から1年
  • 西欧の本質・分割統治
  • 民主主義者の矜持
  • 足利にて
  • 日本の常識、世界の非常識
  • NHKが放った「空手チョップ」
  • 「赤いメガネ」とその外し方をさらに知るために〜参考ウェブサイト一覧
    <厳選された参考サイトのURLを掲載>

著者紹介

竹田 眞也
Takeda Shinya

マーケティングアドバイザー
K グリーンエナジー顧問

1949年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒業。
広告代理店に40年間務める。企画責任者として、変化する社会構造に対応する「販売組織作り」、マーケティング技術を駆使した「需要の創造」を数多く成功させる中で、物事の本質を見抜き、対応する知恵を身に付けた。